千ノ気まぐれ誌

同情するだけの惨めさは無く、ただ嫌悪のみがあった。

購入録:トレッサ横浜その一・センター南その二

ときは鉄道の日

一人の男、これは言うまでもなく私だが、腑抜けた顔で横浜を歩いていた。

例年であれば横浜モアーズのてっぺん、鉄道祭りの中古コーナーで散財の限りを尽くしているはずだった。

しかしながら昨今のコロナ風邪によって呆気なく中止となった。
私の秋の息抜きの時期は儚く散った。

そんな具合で何か掘り出し物は売ってはないだろうかとトレッサ横浜へ足を運んだ。


トレッサ横浜のポポンデッタに訪れた私を待っていたのは、解放された古書棚であった。

ここ半年もの間、うず高く積まれた段ボール箱の裏にその姿を消していた古書の数々。

ほんの僅かばかりであったが、それでもようやく、本の海に埋もれる事が出来る。

いざゆかん、未知の情報が私を待っている。

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こうして私が掘り当てたのは5冊の鉄道ファン。
新生JRの活気ある情報が活き活きと並んでいる。

5冊分の幸せを鞄にしまい、次に向かったのはセンター南駅

そこにあるホビーオフはそこそこの頻度でお値打ちな品物が転がっているのです。

これまで種車を中心に色々と甘い蜜を啜ってきましたが
この日、今までで一番の大物と邂逅を果たしたのです。

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トイザらス限定の「大きな転車台」。
多くのプラレーラーが今も探し求めている貴重な品物、
それが何食わぬ顔で箱の中に寝ていたのです。

この刹那、私の中から理性が消え、代わりに一つの命令、「専用のレールが近くにあるはずだ、探せ」
それが身体を動かしました。

野良犬のようにレールの箱を漁る、
しかしそんな苦労も虚しく、そんなレールはただの一本も出なかった。

少しばかりしょぼくれたものの、手に抱えた品物は掘り出し物、持っているだけで体に力が漲ります。

そして会計に向かうまでの数㍍、その一歩一歩に、行進する兵隊のように、力が入ります。

ああ、これが私の物になるのだ。

会計が済むまでの時間にして数十秒。
言いしれぬ緊張に似た空気が、私の中に立ち込める。

お釣りを受け取る。
レシートを貰う。

こうして中々な大物との邂逅を果たした私は軽やかな足取りでセンター南駅をあとにします。

半年ぶりの古書探り、転車台。
そして寄り道に行きつけの中華そば屋で普段より多く食べる。

すっかりと気を良くした為か、ふとした事を思いつきます。

「そうだ、桜木町にいってみようか」

感覚的に一歩先の距離にある桜木町の町。
周知の通り、ここは鉄道開業の地であります。

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4号機関車にふと会ってみたくなったのです。

他に用事は無し。


普段の私であれば、
このようなほんの少しの展示は
何かのついでに見ていくのが常でした。

しかしこの日の私はちょっと浮かれていました。

それはコロナ風邪の鬱憤からか、鉄道の日だからなのか、幸運に恵まれたからなのか。

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三十分ばかり、飽かず眺め、そして満足した私は帰路につく。

ガラガラの桜木町駅始発の京浜東北線

「ああ、今日はいい日だった。満足、満足。」